「大河」の舞台裏 2

読売新聞 7月9日付 夕刊

エキストラで商人役


 鏡を見ると、江戸時代の町人姿の中年男が映っている。自分であって、自分でないような、妙な気分だ。
 5月28日、『龍馬伝』長崎ロケの2日目も夜明け前に起きた。「どんな役でもいいから」と志願したエキストラの準備のためだ。
 時代劇の格好をする「作り場」には、長崎港の施設が充てられた。私の役は商人。着物に着替え、顔にファンデーションを塗られた。髪をおおう羽二重をのりで留め、カツラをかぶらされる。扇子やたばこ入れなどの小物も持たされた。
 十数人のエキストラのうち、弁髪の中国人にふんする5人は、陸上自衛隊大村駐屯地から来た。その1人は「隊内で募集があり、自ら手を挙げた。五分刈りと聞いていたが、きのう剃るように言われ、理髪店に行きました」とスキンヘッドをなでた。ステッキを手にした外国人たちもいる。
 午前中のロケは国宝の大浦天主堂。コーンスターチ(トウモロコシを原料とする粉)を全身にかけられた。「当時の服装がきれいなはずはない。きっとほこりっぽかったはずだ」。演出陣を率いる大友啓史さん(44)の意図からで、主役も例外ではない。
 現場で顔見知りのスタッフたちに会釈しても、反応が乏しい。こちらから声をかけると、「あっ、地元の人と思っていた。似合ってますよ」。そうか、ひと時でも別人になれるのが時代劇の魅力なのか  
 旅姿の龍馬ら2人が石畳の階段を下りるシーンだった。エキストラは通行人の役だが、演出助手に「商人は散歩。町娘はおけいこ事の帰り。どんな設定か考えると、自然にできますよ」と”演技指導”された。
 「現代人はこっちに逃げて」という呼びかけで、本番に入ると、「人が見切れているぞ」。これは「映ってはいけない人(スタッフ)が映ってしまった」との業界用語だ。撮り直して、「はい、カット、OK!」。大声が響き渡った。
 「福山雅治さんのファン。一目見たい」と応募した町娘役の2人は、龍馬とすれ違う場面があり、「こんなに近づくなんて」と興奮気味だった。9時半、「日本人(役)の方は終わり」と、お役目ご免になった。
 午後、観光名所のグラバー園に移動し、中国人や外国人役のエキストラは引き続き出演した。休憩をはさみ、7時すぎ再開。誰もが美しい夜景には目もくれず、忙しそうに動き回る。
 3食ともロケ弁当で連日、未明から夜遅くまで頑張ったスタッフの皆さん、お疲れさまでした。


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この記事へのコメント

うさぎ
2010年07月27日 11:45
自衛隊で募集があったって、なんか微笑ましいきぶんですね~!!
それにしてもスキンヘッドにしたら、自衛隊内でも目立つだろうな。。。

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