「大河」の舞台裏 4

読売新聞 7月14日付 夕刊

オリジナル脚本 やるぜよ

 民放の連続ドラマでは、人気のある俳優を押さえてから、企画の内容や脚本家を決めるケースがあるのに対し、NHKの場合は「まず企画ありき」。特に、1年間という長丁場の大河ドラマでは、企画と脚本家の占める比重が極めて重い。
 鈴木圭チーフ・プロデューサー(48)は2007年夏、10年の大河ドラマを担当するように命じられた。放送中だった『風林火山』の後には、幕末を舞台にした『篤姫』と、1年置いた戦国時代に戻る『天地人』が控えていた。大河には「同じ時代は続けて扱わない」との不文律がある。
 当時は年金の記録漏れが政治問題化し、「国のシステムが崩れかけている。羅針盤なき時代だけに、道しるべとなるような人物がいい」と考えた。「このところ知名度が低い主人公が続くので、おなじみのヒーローを取り上げたい」と坂本龍馬に着目した。
 龍馬像については、1968年に大河ドラマ化されたこともある司馬遼太郎の『竜馬がゆく』が浸透している。脚本家の福田靖さん(48)らと新たな切り口を探すうち、高知出身で、三菱財閥の創始者となる岩崎弥太郎が浮上した。
 「龍馬とは対照的な人物だが、その事業を受け継いだ側面もある。弥太郎を語り部にして、新しい龍馬像を作ろう」。大河は原作ものが主流で、脚本家のオリジナルは2割にすぎない。今回は、三谷幸喜さんが手がけた2004年の『新撰組!』以来のオリジナルとなった。
 福田さんは「映像化されてきた龍馬は豪放磊落で、いつも同じ。最初からあの龍馬だったはずがなく、土佐で育った普通の青年がどう成長していくかを描きたい。既存のエピソードを全部ひっくり返してやろうと、けんか腰で書き始めた。世間の反発は百も承知でね」と意気込んだ。
 しかし、福山雅治さんの龍馬が受け入れられるにつれ、「闘争心が少し薄れてきた。今や自分との闘い」と明かす。長崎が主舞台となる第3部に入り、執筆が遅れ気味だからだ。龍馬暗殺に向けてどう描いたらいいか、模索している。
 「マラソンに例えれば、10キロしか走ったことがなかったのに、いきなりフルマラソン。今は35キロ地点を過ぎ、きつい坂を上り続けているところですかね」
 これまでは民放での執筆が多く、『HERO』『海猿』などのヒット作は1クール(3ヶ月)だった。今回は1年近くなので、こう苦笑いするのも無理はない。3年がかりで多くの資料を調べてきただけに、「もう、蓄積してきたことを信じるしかない」と、自分に言い聞かせている。

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