「大河」の舞台裏 6

読売新聞 7月16日付 夕刊

「汚れ」にまでリアル感

 『龍馬伝』は週4日、NHKで2番目に広い106スタジオで収録されている。5月のこの日のセットは、高知の漁村。土佐藩士の岩崎弥太郎(香川照之)が、脱藩中の龍馬(福山雅治)に極秘文書を手渡す場面だった。「雨上がりの設定だから、こまめに周辺をぬらしてよ」「はかまのすそ汚しも頼むね」。大友啓史ディレクター(44)が、細かく指示を飛ばす。
 副調整室で本番の画面を見ていて、カットを命じた。「弥太郎の汗、足りないぞ。目で確認しろよ」と演出助手にどなる。「いい芝居してるのに、失礼だよ。初心に戻れよ!」
 演出陣のチーフに起用された大友さんは新たな龍馬像を作るため、歴史上の人物を「僕らのすぐ隣にいる人間」ととらえた。「地に足が着いたリアル感」を演出方針に掲げ、俳優の顔や衣装から建物のセットまで「汚し」を徹底させた。
 今回は大河ドラマで初めて、奥行きのある映画(フィルム)に近い画質で撮れるプログレッシブカメラを導入した。証明や美術面の工夫もあって、ロケの実景とスタジオ内のセットとの見分けがつかない独特の映像空間を築いている。
 さらに、「自由人の龍馬を描くには、僕らも約束事やマニュアルから自由でなければ」と、撮り方でも新方式を打ち出した。1シーンを細かく分けて撮る「カット割り」をせず、1回のリハーサルだけでいきなり「長回し」の本番に入る。
 「僕のイメージ通りに撮ってもつまらない。役者は長いシーンの中で、感情の起伏を自然に表現できる。3、4台のカメラが自由に動き、いい映像を撮ろうと競い合う。この化学反応で熱量が高まるんですよ」
 米ハリウッドに2年留学した大友さんは、こうした手法を2007年の『ハゲタカ』で確立した。企業買収という今日的な題材に挑み、国内外で多くの賞に輝いた。『龍馬伝』の準備を進める一方、自ら脚本も書いた『白洲次郎』を撮り、昨年公開の映画版『ハゲタカ』では監督を務めた。
 「移動する車中でもどこでも、すぐ眠れる癖がついちゃって」と笑う。才能だけではなく、馬力もある。
 『龍馬伝』チームの最年少は、演出助手の津田温子(やすこ)さん(24)。昨年入局し、志望していたドラマ番組部に配属された。収録時間がオーバーし、深夜に及ぶ日も珍しくない。「正直言ってきついけれど、みんなが『新しい大河ドラマを作ろう』と燃えている。その現場に参加できたのは幸せ」と実感している。

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