「大河」の舞台裏 7

読売新聞 7月20日付 夕刊

照明も衣装も新機軸

 5月下旬、『龍馬伝』を撮影しているNHKの106スタジオに、幕末の長崎・丸山の花街が再現された。高級料亭、唐人街、石畳の坂道……。ところ狭しとセットが建てられ、壁際は人が1人通るのがやっとだ。
 デザインセンターの山口類児さん(47)は、セットから大道具、小道具、衣装まで統括する。大河ドラマで「美術監督」を務めるのは2度目。「華やかな大奥がメーンだった『篤姫』に比べ、今回は下級武士の話なので、セットは全く違う。しかも、龍馬は各地を訪れたから、セットの数は倍以上」と苦労を語る。
 出演陣は今回、長いシーンを一気に複数のカメラで撮っている。映りそうな範囲は広いので、美術面では隅々まで気を配る必要がある。「このチームには、リアリティーを重視する人たちが結集している。演出、撮影、照明のスタッフが勝負を挑んでいるだけに、こっちも負けられない」と、緊張感を保ち続ける。
 『龍馬伝』のセットの特徴は、通常なら真上から照明を当てるために設けない天井や屋根があること。照明一筋の佐野清隆チーフ・エンジニア(51)が「時代劇で上からパカパカ照明を当てるのはウソっぽい。室内でもロケのような明りにしたい」と言う通り、窓から差し込む日差しなど自然光に見せる照明法が、リアルな空気を醸し出す。
 天井の照明器具とセットの間にブルーシートを張る工夫も提案した。「光を濾過(ろか)し、青みがかった照り返しが表現できる。カメラマンは空に見立てて、制約なく芝居を撮れるしね」
 NHKで初めての「人物デザイン監修」として、柘植伊佐夫さん(50)を迎えたのも新機軸の一つだ。
 もともとはヘアメークアーティスト。1990年代後半から映画や舞台で「ビューティー・ディレクター」として活躍し、『おくりびと』などを手がけた。主要人物のメークから衣装、小道具までを決める。
 第1部で岩崎弥太郎(香川照之)の扮装を極端に汚した。「汚しすぎる」という批判に対し、「貧しい境遇を強調したかったから」と説明する。ヒロインたちにはイメージカラーを考え、龍馬の妻お龍(真木よう子)には紫と黒を選んだ。
 日本、中国、西洋の生活様式が混在する長崎が主な舞台となる第3部では、「和華蘭(わからん)」をスローガンに掲げた。例えば、はかまにブーツといった具合だ。
 大河ドラマという「古い革袋」に、どう「新しい酒」を注ぐか。それが制作陣の腕の見せどころだ。

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